sidebar_position: 33 hide_table_of_contents: false hide_title: true slug: /iching/33-tian-shan-dun sidebar_label: 天山遁(てんざんとん) title: 第33卦 天山遁(てんざんとん) 詳細解説 description: 天山遁(てんざんとん)は『易経』六十四卦の第33卦です。本稿では、天山遁の卦象、卦辞、爻辞、核心象義、万物類象、古籍原文とよくある質問を整理します。 keywords:
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第33卦 天山遁(てんざんとん)
天山遁(てんざんとん)は、『易経』六十四卦の第三十三卦で、上卦が乾(けん)、下卦が艮(ごん)から成り、雑卦に属します。退避、隠遁、退守、一時的な回避を象徴し、天下に山あり、山高く天遠く、陰が長じて陽を消す象です。核心要義は 「天下に山あり、遁(とん)。君子小人を遠ざけ、悪まずして厳なり」 であり、時宜に応じた退避、身を守り禍を避けること、忍耐して時を待つこと、邪悪を遠ざけ正道を守ることを主とします。中平の卦であり、陰が盛んで陽が次第に長じる中、君子は退くべき時に退き、退いて進むための法則を明らかにしています。
卦象と卦辞
卦象
天山遁が示す道理を象徴します。
卦辞
遁(とん):亨(とお)る。小(しょう)に利(よ)りて貞(ただ)し。
解釈: 遁(とん)の卦は退避・隠遁を象徴し、通じる(亨通)。小事には正道を守ることが有利である。君子が退避して危険を避け、時勢に順応し、正道を守り続ければ通じることを意味します。
爻辞
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初六(しょろく): 遁(とん)の尾(び)、厲(れい)なり。用(もち)いて攸往(ゆうおう)する有(あ)る勿(なか)れ。
遁(とん)の尾(び)、厲(れい)なり。用(もち)いて攸往(ゆうおう)する有(あ)る勿(なか)れ。 解釈: 退遁が最後になり、危険がある。何処かへ行くのは良くない。退避が遅れ、危険な状況に陥ることを象徴し、静かに動かずにいることが安泰です。
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六二(ろくに): 之(これ)を執(と)るに黄牛(こうぎゅう)の革(かわ)を用(もち)う。之(これ)を勝(まさ)るに説(と)く莫(な)し。
之(これ)を執(と)るに黄牛(こうぎゅう)の革(かわ)を用(もち)う。之(これ)を勝(まさ)るに説(と)く莫(な)し。 解釈: 黄牛の皮革で縛り、解き放つことができない。中正で柔順な心を保ち、意志を固くし、外部の力に動じず、時を待って固く守ることを寓意します。
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九三(きゅうさん): 遁(とん)に係(かか)る。疾(やまい)厲(れい)有(あ)り。臣妾(しんしょう)を畜(やしな)えば吉(きつ)。
遁(とん)に係(かか)る。疾(やまい)厲(れい)有(あ)り。臣妾(しんしょう)を畜(やしな)えば吉(きつ)。 解釈: 心に未練があり、退遁が果たせない。病気や危険がある。臣下や妾を養えば吉である。執着や心残りに囚われ、退く意志が固まらないと災いを招くことを戒め、小さなことに退いて守れば安泰であることを示します。
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九四(きゅうし): 遁(とん)を好(この)む。君子(くんし)吉(きつ)、小人(しょうじん)否(ひ)し。
遁(とん)を好(この)む。君子(くんし)吉(きつ)、小人(しょうじん)否(ひ)し。 解釈: 好みがあっても毅然と退遁できる。君子は吉祥、小人はできない。君子は執着を断ち切り、時宜に応じて退くことができ、小人は貪り執着して断ち切れないことを示します。
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九五(きゅうご): 嘉(か)なる遁(とん)、貞(ただ)しきも吉(きつ)。
嘉(か)なる遁(とん)、貞(ただ)しきも吉(きつ)。 解釈: 嘉(よ)く美しい退遁。正道を守れば吉祥。尊い地位にありながら時宜に応じて退避し、進退が道理に合い、徳行が嘉美であることです。
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上九(じょうきゅう): 肥(ひ)遁(とん)、不利(ふり)とする無(な)し。
肥(ひ)遁(とん)、不利(ふり)とする無(な)し。 解釈: 余裕があり高く飛翔し、何にも執着しない退遁。不利なことは何もない。遁の最高の境地であり、超然として物事に束縛されず、全く執着がないため、大吉です。
核心象義
遁卦は、上卦の乾が天・剛健を表し、下卦の艮が山・静止を表します。天は高く遠く、山は静かに止まり、小人の勢力が次第に伸長し、君子の道が消えていくことを象徴し、退避して忍耐し、害を遠ざけ身を全うすることが適切です。人事においては、激流を勇退すること、禍を避けて隠居すること、小人を遠ざけること、鋭気を一時避けることなどに対応し、退避して正道を守り、争わず、時を待って再起することを主とし、権位に執着し退かなければ災いを招くことを警告しています。
遁卦の六爻は退遁の道理を中心に展開します。初六は遁が遅れて危険に遭い動かず、六二は中正を固守して解脱できず、九三は執着に縛られて病み危険に陥り、九四は好みがあっても退き君子は吉を得、九五は嘉美に善く退き正道を守って吉祥、上九は肥遁して高く飛翔し何も不利なし。全体の核心は 「時宜に応じた退避、邪悪を遠ざけ正道を守る、時を待って再起する」 です。
万物類象
- 卦性: 雑卦、上剛下止、天下有山、陰長陽消
- 五行: 金土(乾は金に属し、艮は土に属す)
- 方位: 西北と東北
- 時序: 秋の初め、陰気が次第に生じ、陽気が退避する時
- 人物: 隠士、退避する君子、害を遠ざける人、激流勇退する者
- 身体: 肺、脾胃、関節。退守・静養、気血の収斂を主る
- 動物: 馬、犬、隠棲する獣
- 器物: 革帯、隠遁の器具、高遠なもの
- 場所: 高山、天際、隠居の所、遠く避ける地
- 人事: 退避隠居、小人を遠ざける、激流勇退、忍耐して時を待つ
- 色彩: 白、黄、玄(黒)
- 五味: 辛(から)い、甘(あま)い
- 数目: 一、七、五
古籍原文
卦辞爻辞
天山遁: 遁:亨。小利贞。
初六: 遁尾,厉,勿用有攸往。
六二: 执之用黄牛之革,莫之胜说。
九三: 系遁,有疾厉。畜臣妾,吉。
九四: 好遁,君子吉,小人否。
九五: 嘉遁,贞吉。
上九: 肥遁,无不利。
彖伝
《彖》曰:遁亨,遁而亨也。刚当位而应,与时行也。小利贞,浸而长也。遁之时义大矣哉。
解釈: 遁卦が亨通なのは、退避して後に亨通となるからである。陽剛が位に当たり下と応じ、時勢に順応して行う。小事に利あり貞(ただ)しきは、陰気が浸潤して長じるからである。遁卦が時勢に順応する意義は非常に大きい。
象伝
《象》曰:天下有山,遁。君子以远小人,不恶而严。
解釈: 天の下に山あり、天高く山遠く、互いに退避する、これが遁卦の象である。君子はこの象に倣い、小人を遠ざけ、憎悪を示さずに厳格さを保つ。
《象》曰:
- 遁尾之厉,不往何灾也。
- 执用黄牛,固志也。
- 系遁之厉,有疾惫也。畜臣妾吉,不可大事也。
- 君子好遁,小人否也。
- 嘉遁贞吉,以正志也。
- 肥遁无不利,无所疑也。
解釈:
遁が末尾にある危険は、行かなければ何の災いもない。
黄牛の皮革で縛るのは、心志を固くするためである。
退遁に係る危険は、病み疲れているからである。臣妾を養うのは吉だが、大事をなすことはできない。
君子は好遁できるが、小人はできない。
嘉遁し貞(ただ)しければ吉なのは、心志を正すからである。
肥遁して不利なことがないのは、何の疑いもなく、決然と退避するからである。
よくある質問
遁卦は吉と主するか、凶と主するか?
答:遁卦は中平の卦であり、時宜に応じて退避し、邪悪を遠ざけて正道を守れば吉。貪り執着して退かず、未練に縛られれば凶。退いて進み、時を待てば吉です。
遁卦の「肥遁,无不利」とはどういう意味ですか?
答:何の執着もなく、余裕を持って高く飛翔する退避を指し、遁の最高の境地です。超然として洒脱で、何にも束縛されないため、不利なことは何もないのです。
遁卦はどのような場面に適していますか?
答:激流勇退、小人を遠ざける、禍を避けて隠居する、鋭気を一時避けるなどの退避の場面に適しています。強引に進取すること、権位に執着すること、正面から争うことには適しません。
遁卦を占い、事業や人間関係について問うた場合、どのような示唆がありますか?
答:時宜に応じて退いて守り、是非を遠ざけることが適切です。上九の肥遁が最も吉、九五の嘉遁が吉を得、初六は遅延して間に合わないことを忌み、九三は心に未練があることを忌みます。
遁卦と大壮卦にはどのような関係がありますか?
答:遁卦は陰が長じて陽が消え、退避・退守を主とします。大壮卦は陽が盛んで気勢が強く、進取・強盛を主とします。両者は互いに綜卦の関係にあり、一退一進、一隠一顕で、陰陽の消長に順応します。